代表質問
平成15年1月21日 衆議院本会議
民主党 石井 一
私は民主党・無所属クラブを代表して、補正予算、ならびに小泉内閣の政治姿勢全般について、主として総理に質問を致します。
おそらく、総理の胸中に去来する思いは、これまでに犯してきた小泉内閣の数々の公約違反に対する反省と後悔、そしていつまでも回復しないどころか益々深みにはまっていく我が国の深刻な経済情勢への自責の念にかられておられることでしょう。
そもそも「財政健全化の第一歩として国債発行を30兆円以下に抑える」目標を、小泉総理みずから高々と打ち出し公約されたのは、平成13年5月7日の、この衆議院の議場における所信表明でありました。まさに今、この補正予算においてこの公約も破綻したのであります。
今回の措置は税収不足を補うためとの言い訳をされると思いますが、そのこと事態小泉内閣の経済失政が原因であります。小泉政権の政治責任と、公約違反の数々はきわめて大きいと言わざるを得ません。
まず、2002年度補正予算案に関連して、いくつかの質問を致します。
その第一は、財政支出の経済効果についてであります。改革、改革と叫び一向にその実現の芽を出すことが出来なかった小泉政権が、最近になってやっと政策目標の第一に掲げた「デフレ脱却」のためには、従来の「特定産業救済型」の財政支出をやめるべきであります。具体的には公共事業の全面見直しを進めると同時に、雇用の不安に対応するためのセーフティーネットを充実し、国民の消費意欲を減退させないことが大切であります。政府は、補正予算に計上されている一兆五千億の公共事業を「構造改革推進型」と言っているものの、実体は従来のばらまき型公共事業と、大して変わらないものでありますが、これらの公共事業が改革加速につながるとする理由をご説明ください。
内閣府の試算では、金融機関の不良債権の処理による雇用への影響は、初年度だけで約65万人、その後も毎年度それに匹敵する離職者が出るとされていますが、これは就業者全体の1パーセントに相当し、消費面でも大きなマイナス効果が予測され、「不況克服」どころではなくなってくることが懸念されます。そして、これら離職者の失業の長期化に対応するために、雇用保険の規模拡大は避けて通れない道であります。しかるに、補正予算では雇用対策費が5,000億円程度しか計上されておらず、極めて不十分であります。
総理、経済効果の薄い公共事業を削り、その財源を雇用対策に回すべく補正予算を組み替える必要があると考えますが、如何でしょうか。お考えをお聞かせください。
次に消費税の見直しについてでありますが、1月元旦早々、財界のトップより毎年1パーセントずつ税率を上げて、16パーセントまで持っていくというような、とてつもない提案がなされ、国民の楽しかるべき正月に暗雲を投げかけた感があります。総理はこのところ、消費税の現時点での引き上げには消極的な発言をしておられますが、あなたの約束、公約は、信用できません。そして、今や小泉公約は国民の信を失い「嘘つき純一郎」の声は全国に広がってきています。ここで心して消費税の引き上げに対してのあなたの考え方を述べていただきたいと存じます。
また、今年は所得税の配偶者控除の見直し等が行われる予定であり、直接税重視の姿勢とも伺える、直間比率のあり方と将来的基幹税を何にすえるべきなのか、具体的に明示していただきたいと存じます。
「改革なくして成長なし」とか、「私が自民党をぶっつぶす」などと威勢のよい言葉でスタートし、これまではマスコミにもてはやされた小泉内閣ではありましたが、1年9ヶ月を経た今日、改革もなければ成長もなし。自民党はぶっつぶれるどころか仲々健在で、これが日本の不幸なのです。国民の財布の中身や株、土地などの資産の価値はその失政でどんどん目減りしております。この現実をよりよく理解するため、いくつかの数字を拾ってみましょう。日経平均株価は小泉内閣発足の2001年4月26日の13,973円以来下がり続け、昨今は8,000円台前半となっており、国全体でこの間実に、約140兆円が消えてしまっております。 小泉総理、「株価に一喜一憂しない」とのんきなことを言っている場合ではないのです。
もうひとつの国民の大切な資産ともいえる土地は、内閣府の「国民経済年報」によると、内閣発足時には時価で1,510兆円でありましたが、昨年の秋には約1,360兆円となっており、約150兆円が雲や霞のごとく消えてしまったのであります。
誰がいったい、これら約300兆円になんなんとする、年間国家予算の四倍にも匹敵する大金を持っていってしまったのでありましょうか。国権の最高責任者である小泉総理、その盗人(ぬすっと)はあなただと言われても致し方ないような重要な立場に立っていることを認識して頂きたいと存じます。。
小泉総理、あなたは不思議な人です。別に独身だからというわけでも、ヘアースタイルが独特だからというわけでもありません。党内にたいした支持基盤もないのに、最大派閥経世会の総帥、橋本元総理を破って見事に総理総裁の地位を手中に収められましたが、貴方は公約されたことは全て、今回の国債30兆円枠の堅持、ペイオフの延期、郵政の民営化、一内閣一閣僚の堅持、8月15日の靖国神社参拝などなど、これら全てを反故にされたり骨抜きにされてきたにもかかわらず、歴代内閣の支持率から見ればかけ離れた高い支持率を今日まで維持してこられました。こう考えてみると総理、貴方自身が自認している、「自分は変人である」ことに加えて、オズの魔法使いの様な「不可思議な人物」だとお思いになりませんか。これは一体なぜなのでしょうか。
私は、私見ではありますがその秘密がどこにあるかというひとつの結論に達しました。それは、貴方が議会制民主主義の基本ルールを無視しているからであります。考えても見てください。小泉内閣の構成は、国民の信を得ていない、つまり、議会制民主主義の根本である「選挙の洗礼」を受けていない素人民間人が大手を振って主要ポストを占めています。大臣を辞めればただの人、政策施行に対する政治責任は一切ありません。選挙も関係がありません。
また、自民党各派にはそれぞれ実力者がおりますが、それらはことごとく閣外に放り出され、小泉手法には批判的ですが世論調査におびえ消化不良気味であります。党内野党の守旧派、抵抗勢力と対決するけなげな首相を演じ、それでいて平然と妥協を繰り返し、マスコミや国民からの同情を買っています。
総理、貴方は居丈高に絶叫されますが、その実 「"弱き者、汝の名は小泉純一郎なり"」を自ら自作自演し、小泉テレビ劇場で国民向けのパフォーマンスを演出し、後継者やチャレンジャーを故意に育てず、議会制民主主義を軽視して、実体は役人の言いなりに踊り、難問は民間人や学者に丸投げして、国民やマスコミの同情を煽り続け、決断と実行力を欠き、日本を破滅の奈落の谷へと引きずり落としつつあるのです。それが今日の日本の姿であります。それでも、いい政治をやっているとあなたは胸を張って言い切れますか。その答えは断じて「ノー」であります。今や国民はあなたを見捨てつつあります。
その証拠に、時事通信社が1月17日にまとめた世論調査結果によりますと、小泉内閣の支持率は前月を4.7ポイント下回り、2ヶ月連続で低下しております。支持率が5割を下回ったのは昨年9月以来4ヶ月ぶりであり、いよいよ国民も小泉内閣の虚像とまやかしに目覚めてきつつあります。今後の推移を注意深く見守りたいと存じますが、何かご意見がありますか。
次に、総理の外交方針について一言申し述べます。
内政が行き詰まれば外交に国民の目をそらして点数を稼ぐことは、外国の為政者も行う常套手段でありますが、あなたの本年1月の、モスクワ訪問は、国民の最大の関心事である北方領土問題については解決の道筋がまったく示されなかったのみならず、北朝鮮問題に至っては、昨年9月17日の小泉総理の唐突な訪朝の結果、事態は悪化する一方であります。拉致問題は硬直状態のままで、新に離散家族をつくり、加えて核問題は最悪のデッドロックに乗り上げ、ピョンヤン宣言は空文化してしまっているのではないですか。これらの現状こそ小泉思い付き外交の無残な帰結と断ぜざるを得ません。ご意見をお伺いいたします。
当面最大のイラク問題は、この先の展開が誠に危険な事態に直面しております。米国は単独でもイラクを攻撃する強行姿勢をくずしておりませんが、世界のほとんどの国々は新たな国連決議なしでの武力行使には反対であります。総理は、この機会に我が国がどの様な立場をとるのか明確に国民に示していただきたいと存じます。
1955年保守合同以来半世紀、自民党単独支配の政権が続き、経済繁栄を謳歌したよき時代もありました。しかし近年、失われた10年と申しますが、1993年以来、自民党は失政続きで、そればかりか、毎回毎回スキャンダルの連続であります。前国会での鈴木宗男氏の逮捕、加藤紘一、井上裕氏の辞職、そして大島理森氏の疑惑、本年に入って中村喜四郎氏の失職、そして長崎県の自民党幹事長逮捕などの不祥事は、もはや個人の政治モラルを超えた政権交代のない長期政権からくる慢性的構造腐敗であり、このままの自民党政権ではその歴史的役割を終えるべきであると信じます。
国民は長期政権の現状を知り尽くし、この間に行われた5回の国政選挙で一度も過半数を与えておりません。しかし、定数是正をおこたった不公平な選挙制度に支えられ、加えて、数あわせの談合によって、政権維持に汲々としてきたのです。思い起こして下さい。あるときは長年の宿敵、日本社会党と裏取引して村山内閣をつくり政権に復帰し、その後は選挙を経ずに野党議員をごぼう抜きにして過半数を満たし、いまや公明党とまで野合して政権維持を続けております。前回の総選挙では、自民、公明、保守の政党比例得票の合計は2,500万票、それに対する民主、自由、社民の側は2,700万票で、野党が200万票上回っているのをご存知でしょうか。共産党の獲得した700万票余りを考慮すると与党側は1000万票に近い大差をつけられているのであります。
今や多くの心ある国民は自民党政権の退陣の早からんことを願っているのであります。小泉総理、国家存亡の危機にある今日、今求められているのは、このままの政権の継続ではありません。現在の三党連立政権をきっぱりと打ち切り、潔く下野し、民主、自由、社民党を中心とした新しい政権に一度道をゆずり、救国内閣をつくるくらいの度胸はありませんか。我々もいまだ未熟ではありますが、その任に耐える決意であります。その時こそ、小泉純一郎の名前が燦然と歴史に残るであろうことを申し述べて私の質問を終わります。
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